
ストレングス&コンディショニング:
選手の練習セッションを評価するための簡便で効果的かつ有効な方法
選手のトレーニング強度や負荷を定量化して管理することで、傷害リスクを軽減し、チーム全体のパフォーマンス向上につなげることができます。
チームスポーツにおいてストレングス&コンディショニング(S&C)が注目されています。特に、外的負荷を定量化して計る手法として重要度が増しているのがRPE、sRPE、ACWRです。普段の練習やトレーニングにこれらの指標を組み合わせることで、コーチやトレーナーは選手にとって最適な練習計画とモニタリングを実施することが可能になります。また、傷害の予防やパフォーマンスの向上、特に試合に向けたピーキングにも有効です。
RPE、sRPE、ACWRとは?
RPE(Rate of Perceived Exertion):
主観的運動強度といわれ、運動時に選手が感じた負担度合を主観的に表す尺度。一般的に0から10までの数字が用いられ、「まったく楽」の0から「非常にきつい」の10まで、身体がどう感じたかを数字で表わします。
sRPE:
セッションRPEと呼ばれ、RPEにトレーニングの時間(分)をかけ合わせたもの。トレーニングの強度と時間をかけ合わせて負荷を表していると言われており、一番簡便に負荷を定量化する手法として広く使われ始めています。
ACWR(Acute Chronic Workload Ratio):
急性(Acute)の負荷と慢性(Chronic)の負荷がどういった比率で体に負担をかけているかという割合を示す指標。一般的に急性負荷を1週間の負荷、慢性負荷を3~4週間の負荷で表します。負荷をコントロールし、けがのリスクを予防することができます。
コーチ&トレーナーと選手にとっての効果
コーチ&トレーナーにとって
トレーニング評価が具体的に: 感覚だけで議論されてきたトレーニングの評価が、こういった数値が加わることでより具体的な議論に変わります。「RPEでこのくらいの練習強度を狙ってみよう」と定めたら、実際に選手から聞き取ったRPEと照らし合わせます。それにより、自分たちが計画している練習がきちんとできているのかどうか、といったことが議論しやすくなります。
練習の負荷をコントロール: 数字を使って練習の負荷のコントロールを管理できるため、けがを未然に防ぐことができるほか、選手のフィットネスレベルを上げるのに役立ちます。
個別対応が可能に: 個人差をきちんと数値化し把握することで、それぞれの選手に適切な負荷をかけるための練習量の調整ができるようになります。
選手にとって
気づきと振り返り: 数値化された記録を見ることで、自分たちの状態もしくは練習を振り返るきっかけにもなります。また、「今日の練習はきつかったな」と感じたとき、「しっかりリカバリーしよう」といった気づきの判断材料にも繋がります。
なぜRPE、sRPE、ACWRを用いるのか?
とても簡便: 負荷を測定する高価な機材を購入する必要がありません。毎日の練習時間と主観的な記録をモバイル上で選手に入力してもらうだけで選手のコンディションを把握できるスポーツソフトウェアなら、管理も簡単です。
適切なプランニング: 個々のアスリートの状態は身体的、心理的、感情的な要因や、環境や食べ物などによって異なります。数値化された記録をモニタリングし評価すれば、より適切なプランニングができます。個々の選手やチーム全体に適したトレーニング負荷と強度を調整し、試合等の目標時点で最高のパフォーマンスを引き出すことも可能になります。
けがの防止: ACWRの急激なアップダウンはけがのリスクが高まります。ACWRの数値をモニタリングすることで、けがの予防につながり、パフォーマンスの維持や向上に貢献することができます。
RPEにも「主観的」という欠点はあるものの、トレーニングプロセスにおいて内部負荷の定量化は重要な要素です。外部負荷と内部負荷の測定値を組み合わせて使用することが、トレーニングプロセスと対応の全体像をつかむためには理想的ですが、まずは簡便に導入できる手法を取り入れてみませんか。
Sunbearsでは東洋大学アイスホッケー部およびBring Up Athletic SocietyのS&Cコーチ、臼井智洋氏にインタビューさせていただきました。実際にどのようにチーム練習にRPE、sRPE、ACWRを取り入れて活用したらいいのか、詳細はnoteのブログをご覧ください。
*参考文献:
Perceived Exertion (Borg Rating of Perceived Exertion Scale), Center for Disease Control and Prevention
Quantifying Training and Competition Load, NSCA
Session Rating of Perceived Exertion Is a Superior Method to Monitor Internal Training Loads of Functional Fitness Training Sessions Performed at Different Intensities When Compared to Training Impulse, Frontiers in Physiology
Session-RPE Method for Training Load Monitoring: Validity, Ecological Usefulness, and Influencing Factors, Frontiers in Physiology
Ryan White, Acute:Chronic Workload Ratio, Science for Sport